「彼は・どうしたんだ・・?」
誰ともなく呟く。魔王軍数百体を相手取り無双していた、勇者候補生トラヴィス=クロフォードの動きがここにきてに徐々に悪くなっている。動きが、とてつもなくぎごちない。
「しまった!」トラヴィスが叫ぶ。
魔王軍のゴブリン数十体がトラヴィスの脇を抜け、帝国軍を目指し突進する。
「うんこを・・もらすしかないのか。それでも、俺は・・俺はっ、人を助けたい!」
トラヴィスの眼に悲壮なる決意が芽生える。
「便意開」
「ふざけんじゃないわよっ!!」
ゴブリン達が一瞬にして切り刻まれる。ゴーレムの一撃により重傷を負った聖騎士エレンがそこにいた。
「アンタどこまで私達をなめてんよ。早くいってきなさい!!」
「え、でも」
「帝国騎士を侮るな。私達は、子供じゃない!」
「・・すまん!ちょっくら行ってくる。ちなみに場所わかる・・?」
「・・向かって右の道具屋の二階、が昔は綺麗だったわ。」
「サンキュー!」
トラヴィスが道具屋に向かって走りだす。何が起きたのかわからず呆然とする帝国軍に、聖騎士エレンは声をあげる。
「お前達、あの天才クンに護られたままで良いのか。帝国騎士の意地を見せてみろ!」
(次回へ続く・・)