便座に腰掛けた勇者候補生のトラヴィス=クロフォードは、水洗ボタンを押しても水が流れないことに衝撃を受けた。
「ボタン越しに魔力を流せば水は流れるはずだけど。魔力を供給する装置が壊れているのか・?」
トラヴィスは再度、水洗ボタンを押した。
「いや、魔力そのものがボタンに干渉できていない。俺の魔力が弾かれている。」
「魔力が物質に干渉できないケースは、魔力を干渉を防ぐ強力なバリアが張られてるか―」
右手に魔力を込め、天井に向かって雷の魔法を全力で行使する。一瞬の強烈な発光の後、雷が着弾する。
「次元が異なる場合。」
煙さえも発生しない、無傷の天井。雷によって生じた熱でトラヴィスの額からは汗が流れた。
「そうか。この街は時間が止まってるんだ。」
(次回へ続く・・)