社会

[第10回]幻声人語 – 料理人の黄金時代 –

昨今、料理で扱う食材に魔物達も加わるようになった。魔法による調理技術も発達し、今まで余り美味しくないと敬遠されてきた食材が食卓にのぼるようになった。

料理人には更なる知識と技術が要求され、日々新しい料理や調理方法が発見される。週刊誌は今の状況を食の黄金時代と呼んだ。

料理のバラエティが増えると、客もそれに慣れる。もっと新しい味を、もっと上手い料理を。次第に食材の質が求められる。

通常の食材なら農協から卸してもらえば良い。もっとこだわるなら最近では農家と直接契約するのもアリだ。しかし魔物素材は違う。

より素材としての価値が高い魔物を倒せるのは、一流の冒険者か魔物狩りを生業とする傭兵団だけだ。料理人達はこぞって名のある傭兵団に食材をハントしてくれるよう依頼を出した。

「でもね。結局やつらは、倒すことがメインなの。肉を魔法で切り裂いたり、魔法で内臓を破壊しちゃってるから、全然食材としてダメなわけ。保管方法も雑だから腐りかけの状態で納品してきたり、まるで分かってない。ダメだ、こうなったら俺らがやるしかないじゃんってね。」

グランドール王国で龍鍋専門店を営むガイドンさんは、笑いながら言う。この夏から、料理人だけでチームを作り、食材を巡る魔物捕獲遠征を定期的に行う。ガイドンさんはそのチームのリーダーを務める予定だ。

料理人達の夏がやってくる。