先日、とある海外の魔法杖メーカーがグランドール王国に進出することを発表して魔法業界がざわついた。そのメーカーは、魔力をネットワーク越しにストレージに蓄えることができる会員制の魔法仮想ツールを提供していて、普段使わない余分な魔力をストレージに保存しておけば有事の際に役立つとのことだ。
今まではいかに知識があっても魔力量という絶対的な天分で魔法使いが区分けされていたから、これは大変画期的な技術だと思う。特に我がグランドール王国では土地柄優秀な魔法使いが多く、このような技術を軽視している所もあったので、今回の一件は硬直した業界にとって良い薬になるのではないだろうかと考えている。
実際に各社報道機関や魔法研究者達は今回の電撃進出を好意的に捉えているし、王国ユーザーにむけて開始した事前登録キャンペーンは開始初日で10万人を越える勢いを見せている。
一見何もかもが上手くいっている新しい時代のサービスなのだと思いがちだが、反面、本国では数多くの訴訟を抱ている問題のあるサービスでもある。
特に問題となっているのはアカウントハッキングによる魔力の流出だ。通常、異なる人間の魔力を他人が使うことは難しく、魔力吸収は名のある大賢者しか使えないSランクの技術だと言われている。しかし今回の仮想ツールでは、魔力をストレージに格納する際、個々人の魔力の特色を消し、共通化した魔力波に変換して格納している。これによって引き出しさえすれば誰でも簡単に扱うことができてしまうようだ。
もし魔法仮想ツールを使うことを検討しているのなら、リスク調査し慎重に導入することをおすすめしたい。