政治

[第11回]幻声人語 – 武力こそ権力 –

武力がそのまま社会的地位になる。ヴァリナス帝国の権力構造を初めて聞いた時は、イマイチピンとこなかった。帝国では武の力が最も重んじられ、単純に一対一の決闘で勝利した者が、敗者より高位の立場になる。階級が定まる。そこに権謀術数は存在しない。ただ弱肉強食の世界があるだけだ。

帝国全土を治める武王「ガルバート」も在位して5年。決闘において負けはない。常に自信を鍛え、強き者であり続ける。不思議と、権力の上位を占める者に、邪な人間が少なくなった。

国民たちも、強ければ成り上がっていけるこの体制を歓迎している。誰もが強者になろうとする世界。そこには武人としてのあり方が生まれた時から問われ続ける。闇討ちや奇襲をした者は、国民全てから軽蔑され、迫害される。

世界の暗殺や毒殺のニュースを聞く度に、このようなシンプルな世界こそが人間にとっての理想郷なのではないか。ふと、そう考えずにはいられない。