廃墟サンカノを舞台に、ヴァリナス帝国軍と魔王軍の市街戦が始まった。
魔王軍が空気の緩んだ瞬間を衝き、帝国軍の隊列は一瞬にしてぐちゃぐちゃになった。戦域は乱戦模様を呈し、同士討ちも見られた。
魔王軍は、少数のブラックメイジと武装したゴブリン、ゴーレム部隊。帝国軍から見れば遥か格下の相手。
この状況を打開するため聖騎士エレンと騎士団長イスカは声を張り上げ、隊列の再編を急ぐも、魔王軍のメイジが音を遮断する魔法を周囲に行使する。
「完全にやられたわ。」
それもそのはずだ。魔王軍は今まで、知能が低く原始的な攻撃しかしてこないのが当たり前だった。グランドール王国の司令官シレンが「最近の魔王軍には指揮官がいるかもしれない。」と発言していたことを思い出す。まさか待ち伏せを行ってくるとは。
新兵達を護りながら、聖騎士エレンは過去の敗戦を思い出していた。
「また負けるのかも知れない。」
完治にまで至っていない敗戦の傷がジワリと痛む。その僅かな隙に、ゴーレムの一撃が聖騎士エレンの脇腹に突き刺さった。
(次回へ続く・・)