社会

[第12回]幻声人語 – 相手がいなくなる時 –

4月末に起きた戦争で私達人間は魔王軍に初めて勝利し、土地を奪い還した。今、ユニシア大陸全土が勢いづいてる。もしかしたら勝利できるのでは。絶望に彩られた年明けに比べれば、幾分希望が見える。

昔、と言っても23年ほど前だが、私が記者に成り立ての頃は、魔王と聞くと嫌な気持ちになったものだ。必ず奪われ、失っていたし、現在と比べ、武具も魔法も成熟してなかった。国全体で、どう被害を最小限に抑えるかしか考えていなかった。今考えると、ある種の天災のように捉えていたように思う。

それがどうだ。魔王軍を打ち負かし、奪われた土地を取り還す。人間の成長とは本当に素晴らしい。でもここで気づく、希望が見えたからこそ、その先に待っているものは何か。
もし仮に、魔王軍に勝利したとき、今まで培ってきた大規模な兵器はどうなる。魔物がいなくった時、傭兵団や騎士達はどうなる。その矛先はどこに向くのか。

なんとなく、気になって今日も眠れない。