カルチャー

[第14回]幻声人語 – アイドル達の戦場 –

かの思想家ゼン・ゼルックが「この激動の時代において弱さとは罪である」と言ったことは記憶に新しいが、まさに今そうなっている業界がある。アイドル業界だ。

以前は平和だった街道もいまや盗賊や魔物で溢れている。全国ツアーで地方を回るために、スタッフの装備を整え、傭兵団を雇う。地方でライブ一つ行うのにも莫大なコストがかかる。ライブ開催前に死者が出て、機材が盗まれたら目も当てられない。必然、アイドル達のライブが首都中心で実施されるようになり、地方に巡業に行くケースが減った。

地方の人々は魔導ネット越しに音楽を楽しむ日々。

そこに、風穴を空けたアイドルが現れた。バーニーズ事務所に所属する「HERO7」だ。メンバー全員が元騎士や現役の傭兵という異色の経歴を持つ彼らは、街道に潜む盗賊や魔物など恐るるに足りない。

彼らが前線に立ちスタッフを護り、魔物を倒しまくる。地方公演も積極的に行い、蛮行を繰り返す盗賊達をこらしめる、彼らはアイドルでありながら、地方にやってきた救世主だ。

こうなっては、歌だけを歌うアイドル達に物足りなさを感じてしまうのもしかたない。